第207章 罠に陥れる

 低くまろやかな声が響いた瞬間、先ほどまで安堵していた山本静香の体は不意にこわばり、顔色をがらりと変え、瞳を極限まで見開いた。

「うそ、佐藤さんがどうしてここに? じゃあ、中で山本家の次女と一緒にいた男は佐藤さんじゃないの?」

「マジか、びっくりした。佐藤さんじゃなかったんだ!」

「じゃあ誰なの?」

 平川希は口の端に綺麗な弧を浅く描く。彼女たちが自分を陥れようとするのなら、彼女たちが思い通りになる機会など与えるものか。

 山本静香は膝から力が抜け、壁に手をついてかろうじて体を支える。自分に言い聞かせていた強がりの言葉が、この瞬間、音を立てて崩れ落ちた。

 中の男は佐藤遥人ではな...

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