第82章 悪人先に訴える

平川希はわずかに眉を寄せ、手にしたカップを置いた。これから竹本恵梨香が繰り広げるであろう芝居については、すでに見当がついている。

「宇野さん、平川さんが自分で転んだのに、私と何の関係があるっていうんですか?どうして私に八つ当たりするんです?私は善意で平川さんのそばに残って介抱していたのに、こんな風に濡れ衣を着せられて、虐待までされて……理不尽だ!?」

竹本恵梨香は床に倒れ込み、声を張り上げて問い詰める。その様子は痛々しいほど憐れで、涙に濡れ、顔は腫れ上がり、この上なく苦しげな表情は、彼女以上に無実な者はいないと訴えているかのようだった。

「どういうことだ?」病室に入ってきた高原賢治は、...

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