第224章

「わたしが出――」

古村恵子は怒鳴りつけようとして、ふと横を見る。江崎清が相変わらずすすり泣きながら、いつまでも芝居を続けていた。しかもその目が、落ち着きなく恵子の身体を追っている。

恵子は胸の奥の悪いものをぐっと飲み込み、電話口へ平然と声を向けた。

「いま、どこにいるの?」

「外だ」

古村陽平のその一言は、古村恵子にとって反則みたいなものだった。恵子は苛立ちを隠しきれず、鼻で何度も笑ってから続ける。

「いまね、あんたの彼女と一緒に、会社の近くのカフェにいるの」

「出てきなさい。会って話すわ。ついでに、結婚の話もね」

その言い方がまた、陽平に反論の余地を与えない。

彼女? ...

ログインして続きを読む