第233章

「……さやか」

江崎鏡は、結局のところ古村陽平に借りを作りたくなかった。

彼女が知る古村陽平は、一度手を貸せばそれを一生の武勇伝みたいに覚えていて、折に触れて蒸し返す。下手をすれば「誠意を見せろ」とでも言わんばかりに、きっちり返礼まで求めてくるタイプだ。

そんな代償、鏡には背負いきれない。

ところが古村陽平は間髪入れず、高橋さやかに向かって言った。

「最近、雲市は物件が足りてない。まだ探してるんだろ。俺が当たってやる」

「ほんとに?」

案の定、たった数言で高橋さやかみたいな年頃の子の心はぱっと開く。

「じゃあ古村社長、お願いします! もう、ほんとにご親切で……引っ越しの件、早...

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