第254章

江崎鏡はその様子を見て、結局、ため息まじりにベッド脇へ座り直すしかなかった。

秋澤月子が娘の手をそっと握る。鏡はそこでようやく、ずっと胸の奥に押し込めていた言葉を吐き出した。

「お母さん、今日の江崎清がどれだけひどかったか、知らないでしょう」

鏡は慌てて、江崎清が自分に持ちかけてきた話――手を組んで江崎明を陥れようとしたこと――を月子に説明した。

けれど月子は、驚いた様子をほとんど見せない。

修羅場をくぐってきた人間だ。江崎清の小細工など、月子の目には舞台にも上がらない算段に過ぎなかった。商戦と呼ぶにも値しない。

それでも、鏡が相手にしなかったと聞いて、月子は少しだけ表情を和らげ...

ログインして続きを読む