第272章

古村陽平の面子をまずは勢いで支えるために、江崎鏡はわざわざボルドーのスクエアネックのベルベットドレスを選んだ。身幅はゆったり、スカートもふわりと大きく広がって、どこかプリンセスめいた雰囲気がある。

江崎鏡が、こういうドレスに手を伸ばすことは滅多にない。

本当なら、自分の結婚式でこんなパニエの入ったドレスを着てみたかった。けれど時間が過ぎるほどに、鏡はそういうものを待ち望む気持ち自体が、もう自分の中から薄れていくのを感じていた。

鏡の中の自分を見つめる。黒髪は簡単に後ろでまとめ、耳たぶには左右それぞれ白いパールのピアス。安全のため、細いピンヒールは避けて、比較的低めの靴を選んだ。

部屋...

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