第275章

江崎鏡がどうして酒を飲めないのか。

古村陽平にも、結局のところ理由はわからなかった。

ただ、高槻元成が差し出したグラスを見た瞬間、江崎鏡がはっきりと拒もうとしたのだけは見えた。

最初は、あの男の腹の底を疑って受け取らなかったのだろう、とも思った。だが江崎鏡は、高槻元成に限らず、誰が勧めても酒を断っている。ここ数日の妙な食べ方、落ち着かない振る舞いまで思い返したとき――ずっと胸の奥に沈めていた疑問が、また顔を出した。

壇上で高槻元成が同じ話をくどくどと繰り返しているのを聞きながら、古村陽平は苛立ちを募らせた。

根拠のない推測が、心の中で何度も舌先を探るようにうごめく。もう我慢が利かな...

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