第279章

「えっ、かしこまりました。お二人、何をお飲みになりますか」

給仕は慌てて好奇の視線を引っ込め、古村陽平に深々と頭を下げた。

「ロングアイランド・アイスティー。……それと、ミルク」

強い酒を一杯、もう一杯は――。

給仕は一瞬固まり、古村社長の注文が最近ますます妙になってきたことを改めて思い知る。

「聞こえなかったのか?」

古村陽平が苛立たしげに目を上げ、返事を待つ。

「あっ……はい、かしこまりました。少々お待ちください」

立ち去る直前、給仕はこらえきれずに江崎鏡へもう一度だけ視線を投げた。

江崎鏡は言葉にしがたい表情で古村陽平を見つめている。給仕の背中が遠のいてから、ようやく...

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