第280章

秋澤月子が娘を案じる気持ち――それは古村のおじいさんにも痛いほどわかった。

当然だ。江崎鏡は、本来ならもっと早く古村家を出て、自分の望む暮らしを始められたはずなのだから。

古村陽平が「離婚する」と言ったかと思えば、次の瞬間には「やり直したい」と手のひらを返す。その行ったり来たりで時間だけが削られる。鏡本人が情にほだされて耐えられても、母親が黙っていられるわけがない。

古村のおじいさんはその様子を見て、杖に手をかけ、ゆっくりと立ち上がると、秋澤月子に深々と頭を下げた。

「月子、これはうちの孫が悪い。高槻家と因縁があるとわかっていながら、鏡を連れて宴席に行くなんて……結果的に鏡に恥をかか...

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