第286章

「……ありません」

江崎鏡は、きっぱりと言い切った。

その場の視線が一斉に彼女へ集まる。泣きじゃくっていた古村恵子も、思わず息を呑んで涙を止めた。鏡はもう一度、淡々と続ける。

「こんな時間に、古村家は明かりがついていて。てっきり皆さん、彩を探すのに必死なんだと思っていました。でも実際は、ここでのんびり責任追及ですか。……いいでしょう。責任を問うなら、はっきりさせましょう」

古村陽平は、鏡がここまで厳しい顔をするのを滅多に見ない。呆けたように固まる彼に、鏡は言葉を重ねた。

「わたしと彩は、最初から最後まで揉めたことなんてありません。わたしは彼女に、後ろめたいことは何ひとつないです」

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