第290章

「せっかく外に出たんだ。だったら、にこにこ楽しく遊び尽くさなきゃ損だろ。そんなに急いで帰ってどうする」

天野おじいさんの言葉に、古村彩は一瞬、反応が遅れた。

これまで周りの誰もが彼女に言ってきたのは、身の程をわきまえて家にいろ、ということばかりだった。商いの勉強をしていずれ家業を継げ、あるいは早く嫁いで子を産み、舅姑に孝行していればいい――そんなふうに。

こんな言葉を、かけられたことは一度もない。

古村彩が呆然としているのを、天野おじいさんは気まずさごと見抜いたらしい。

彼はつかつかと近づき、さっき用意した薬草を古村彩の頬にぬりつけた。

「ちょ、なにするんですか!」

古村彩は悲...

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