第294章

金さえあれば、どこへ行っても困らない。

――そう思っていたのに、観光シーズンだけは別だった。有り金があっても、使う場所がない。

江崎鏡は、ホテルを取る段になって初めて思い知った。葉山市のホテルは、半分以上がすでに満室。残っている半分も、汚くて狭い、間取りの悪い部屋ばかり。

三人でありとあらゆるツテと手を尽くして、ようやく見つけたのが、まともな五つ星ホテルだった。

ところが――。

古村陽平が黒いカードを豪快にひらつかせ、フロントのスタッフに三部屋頼もうとした、その瞬間。

「申し訳ございません、お客様。本日はシングルベッドのお部屋が二部屋のみとなっております」

二部屋?

しかもシ...

ログインして続きを読む