第297章

食事を終えたあと、古村陽平は酒を飲んでいて運転できず、江崎鏡も仕事の用事が立て込んでいた。

そこでハンドルを握るのは天野尋、という流れになる。

「桐原おばさん、ご心配はわかっています」

桐原梅子はしばらく江崎鏡の顔を見ていないうえ、JMジュエリーの案件が山ほど重なって、もうてんてこ舞いだった。結局、頼れる相手に電話して、せめて一言でも安心したかったのだろう。

「もうすぐ戻ります。大丈夫ですから」

「ええ。じゃあ、またそのときに連絡するわね」

通話が切れると、江崎鏡は貼りつけていた笑みをふっとほどき、長く息を吐いた。すると隣で、古村陽平が気だるげに言う。

「桐原梅子か?」

江崎...

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