第303章

電話を切った瞬間、空気がすっと固まった。

江崎鏡は長く息を吐く。背後から、案の定聞き慣れた声が飛んできた。

「何かあったらって……心配で、ついてきたんだ」

「……母からの電話です」

やっぱり、古村陽平だ。

さっきの受け答えが一歩でも遅れていたら、子どものことは表沙汰になっていただろう。鏡はすぐに表情を整え、振り返って言った。

「ええ。最近どうしてるのか、とか。いつ戻るのか、とか……それだけです。……会いたいって」

古村陽平は、どうにも調子が狂っているようだった。全部いったんは腹を割って話したはずなのに、二人の間のぎこちなさだけが、日ごとに増していく。

鏡に申し訳ないという思い...

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