第309章

「どうしてそんなこと言うの、彩」

「向こうは心がまだ子どもなんだよ。わたしたちほど大人じゃない。気にしなくていいの。子どもだと思っておけばいい」

江崎鏡はやわらかく古村彩をなだめた。案の定、彩はくすっと笑い、鏡にぎゅっと抱きついたまま離れない。

その様子を、古村陽平は少し離れたところで黙って見ていた。もともとは部屋でスマホをいじっていたのだが、暇つぶしに鏡と雑談でもしようと思って来てみれば――先客がいる。しかも一番厄介なやつが。

仕方なく、彼は壁際で待つことにした。

彩が帰ったあとで、鏡と二言三言話せればいい。そう思っていたのに、この調子では帰る気配がない。帰らないだけならまだしも...

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