第310章

「明日でいいか?」

古村陽平は明らかに眠る気がなかった。手をひらりと振って、古村彩を部屋へ追い立てる。

自分はというと、どうにも寝つけない。だったらプールサイドで風に当たっていたほうがましだ。

一晩吹かれていれば、いろいろ少しは整理できるかもしれない。

古村彩もそれ以上は構わなかった。恋に溺れている人間ほど救いようがない――それを彼女は身をもって知っている。

彩が部屋へ引き上げると、プールサイドは一瞬で静まり返った。陽平は椅子に腰を下ろし、聞こえるのはさらさらと鳴る風の音だけ。正面から吹きつけ、何度も何度も襟元へ冷気を流し込んでくる。

彩の言葉を思い返さなかったわけじゃない。言っ...

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