第316章

天野尋はその様子を見ると、古村彩に向けて微笑み、うなずいて励ました。

「そうだ。それが、俺の知ってる古村彩だ」

「ありがとう、天野さん」

古村彩の口元に、ようやく小さな笑みが灯る。久しく見ていなかった、あたたかな笑顔だった。

彼女はもう、天野兄さんとは呼ばなかった。自分と天野尋の関係は、ここまでなのだと――そう思う瞬間が増えていたからだ。

友だち。友だち以上には、なれない。

そして天野尋も、このとき何かを悟った。

葉山市まで古村彩を探しに来て、見つけたあとも、江崎鏡と古村陽平の手前、事情をきちんと話せないまま今日まで来てしまった。

だからこそ今が、いい機会だと感じた。

「古...

ログインして続きを読む