第360章

「どうした。俺が戻ったのが、そんなに意外か?」

「それとも最初から、俺に帰ってきてほしくなかった? 祖父を怒らせて死なせて、古村家を潰したい……そうすりゃ満足か」

古村陽平がああいう構えを見せることは滅多にない。だからこそ、なおさら恐ろしい。

ずしりと重い足音が、じりじりと近づいてくる。目に見えない悪魔が迫ってくるみたいで、背筋が冷えた。

古村恵子は息を殺し、視線をあちこちへ逃がした。けれど結局、古村陽平の陰りを帯びた眼差しからは逃げ切れない。

「わ……わたしは、あなたの実の母親よ!」

「それを盾にするな」

古村恵子はそれしか言わない。聞き飽きた。うんざりするほどに。

古村陽...

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