第361章

「奥様、やっと出てくださった……!」

受話器の向こうで葉山言が切羽詰まった声を上げた瞬間、江崎鏡は胸の奥がひやりとした。何かが起きた。しかもそれは、古村陽平にとって不利な出来事に違いない。そう直感して、息を殺すように問い返す。

「……何があったんですか?」

葉山言は言いよどみ、逡巡の気配を挟んだ末、古村陽平と古村恵子の件を、結局すべて吐き出した。

「奥様、この電話は俺の独断です。古村社長とは関係ありません。命令されたわけでもないんです。ただ……あんなふうに落ち込んでるのを、見ていられなくて……」

「本当は、何もかも古村夫人が悪いんです。古村社長は関係ない。なのに、社長だけが一人で抱...

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