第363章

「失礼いたします。高槻昌弘さまにお目にかかりたくて参りました」

以前、古村陽平と高槻元成の因縁に巻き込まれたせいで、江崎鏡もまた当事者の一人になっていた。

だから高槻家の門をくぐった瞬間から、胸の奥がひやりとして落ち着かない。

元成に会うのが怖い。アリスに会うのも怖い。どちらも、まともに相手をしていい人間じゃないと知っている。

けれど――今日は、古村家の若奥様でも、古村陽平の妻でもない。

離婚する。もうすぐ。

その事実を、鏡は何度も心の中でなぞった。

自分はJMジュエリーの人間として来た。デザイン部長として、仕事で来たのだ。

これなら、さすがに理不尽な目には遭わないはず――。...

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