第390章

「江崎鏡、あんた……よくも私を殴ったわね!」

江崎清は否定も肯定もせず、ふいと顔を背けた。頬がみるみる赤く染まっていく。だが古村陽平の目には、それよりも江崎鏡の目尻に滲む赤のほうが、ずっと痛々しく映った。

胸の奥がきしむほど、鏡が可哀想だった。なのに――すぐ耳に飛び込んできたのは、江崎清の甲高い声。

「ずっと陽平兄さんに隠してたのは、そっちでしょ。後ろ暗いことしておいて、よく私を殴れるわね!」

「今日ばかりは腹くくったわ。陽平兄さんの代わりに、あんたをちゃんと叩き直してやる!」

言い終えるや否や、江崎清は江崎鏡に掴みかかろうとした。

顔は歪み、今にも牙を剥きそうな形相。見ているだ...

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