第406章

目尻と眉のあいだで、涙の粒がまたひとつ、つうっと滑り落ちた。

江崎鏡の脆さが、古村陽平の目の前であらわになる。いまの彼女は、まるで小さな子猫みたいに手当てが必要で――そのぶん、陽平の胸は刃物で抉られるように痛んだ。

「……あとで、家まで送る」

家。

古村陽平がその言葉を口にした瞬間、鏡の涙は堰を切ったように落ちていく。

家って、どこ。

母はもういない。前に住んでいた部屋だって、とうに引き払った。高橋さやかには高橋さやかの生活がある。どれだけ親友でも、いつまでも甘えるわけにはいかない。

じゃあ、ほかにどこが「家」だというの。

古村家――?

冷たく距離を取るような鏡の表情を見て...

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