第410章

初めて見たとき、古村陽平は病室のベッドに横たわったまま、ぴくりとも動かなかった。それでも江崎鏡は、整いすぎるほどの顔立ちと、全身から滲む育ちの良さに目を奪われた。

あの頃の彼女は、鼻筋にそっと触れるだけで、長いまつげに指先がかすめるだけで、あるいは血の色の唇に視線が落ちるだけで、胸が勝手に跳ねた。もう少しだけ触れていたい。もう少しだけ、彼の体温を確かめていたい。そんな衝動が、どうしても抑えられなかった。

やがて古村陽平は少しずつ回復し、鏡は悟る。自分たちは、立っている場所が違いすぎるのだと。

近づけるはずのない夢は見ない。ただ、何度でも丁寧に世話をする。運が良ければ、彼の鼓動が聞こえる...

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