第411章

市役所の正面玄関には、離婚届を出しに来たらしい人間が思いのほか多い。黒い塊みたいにうじゃうじゃと固まっている。

江崎鏡は、彼らを「これから別れる夫婦」と分類せずにはいられなかった。顔色は誰も彼も最悪で、相手を見る目つきはまるで取り立て屋だ。

それに比べれば、自分と古村陽平はずいぶん静かだった。

古村陽平は隣の席で黙り込んでいる。何も言わないせいで、呼吸の音まで聞こえてくるほどだ。

すう、はあ。

規則正しく、淡々と。

車内の妙な空気を感じ取ったのか、それとも窓の外の光景が目に入ったのか。車を停めた運転手は一言も発さず、首をすくめるようにしてバックミラー越しに二人の様子をそっと窺って...

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