第10章

月曜。新谷音羽は約束どおり、蒼井グループ本社ビルへ足を運んだ。

高級ジュエリーブランド「ショーカ・ジュエリー」は最上階の三フロアを丸ごと占め、デザイン部はその最上層。窓の向こうには街が広がり、視界の端まで、A市の輪郭を一望できた。

人事部長が自ら出迎え、恭しすぎるほどの笑みを浮かべる。

「蒼井夫人、こちらへ。お部屋はすでにご用意しております」

「茅野部長」

熱のこもった案内に合わせて歩きながら、新谷音羽は足を止めた。声は丁寧で、距離だけがきっちりと残る。

「社内では、私の身分は公にしないでください。デザイン部の新任チーフデザイナー、新谷音羽として扱っていただきたいんです」

茅野...

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