第103章

「……わ、私……新谷音羽さんが入院したって聞いて、それでお見舞いに……」

星野結月は口を開き、血の気のない、作り物めいた言い訳を絞り出した。

蒼井沢言の視線は、彼女の顔に一秒も留まらない。言葉を交わす気すらないのか、入口の警備員へ冷たく顎をしゃくった。

「連れ出せ」

警備員がすぐに踏み込み、星野結月の呆然とした抵抗など意に介さず、腕を取って病室の外へ引きずり出す。

病室に残ったのは、蒼井沢言と蒼井翼だけだった。

蒼井沢言の視線が、ゆっくりと蒼井翼へ落ちる。そこに怒りはない。底なしの失望と、言葉にしない警告だけ。

蒼井翼の身体がびくりと硬直し、心臓が一拍、抜けた気がした。目を合わ...

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