第109章

新谷音羽は彼を見つめた。唇がわずかに動く。けれど結局、何も言葉にならなかった。

「叔父様の命令で来ました」

蒼井翼は視線を落とし、彼女の目を避けるように言った。

「鑑定結果が出ています」

その数文字が、巨石みたいに音羽の胸の湖へ叩きつけられる。水面は一気に荒れ、千の波が立った。

反射的にスカートの裾を握りしめる。指の関節が白くなるほど力が入って、息さえ止めてしまう。

「……結果は?」

風に触れたら消えてしまいそうな声だった。

蒼井翼は長いあいだ黙っていた。長すぎて、音羽は――また自分が悪い夢を見ているのでは、と錯覚しそうになる。

やがて彼はゆっくり顔を上げた。

かつて澄ん...

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