第113章

蒼井明司が足早に廊下を駆けてきた。背後には、顔面蒼白の秘書がついている。

会社からそのまま飛んできたのだろう。上着すら脱ぐ暇がなかったらしく、いつもは温厚に整っているはずの顔に、嵐みたいな怒気が張りついていた。

明司は蒼井沢言の前まで来ると、息子の――人とも鬼ともつかない有様を見て、腕を振り上げる。全身の力を込めて、容赦なく頬を打ち抜いた。

パァン!

乾いた音が、がらんとした廊下に跳ね返り、耳を刺す。

蒼井沢言は顔を横に弾かれ、口の端にすぐ血が滲んだ。だが痛みなど感じていないみたいに、目の色ひとつ変えない。視線はただ、病室の方角に縫い付けられたままだった。

「今のお前が、どんなツ...

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