第127章

そう言い終えると、彼女はくるりと踵を返し、混乱の渦中から優雅に立ち去った。瞳の奥に沈めたのは、してやったりの笑み。

長い待ち時間ののち、救急室のランプがようやく消えた。

医師が出てきて、疲れた手つきでマスクを外す。

「命の危険は脱しました。ただ、これ以上の精神的な刺激は禁物です。そうなれば……結果は想像したくありません」

蒼井翼は小さく頷き、鉛を詰めたように重い脚を引きずって病室へ入った。

蒼井静子は眠っている。頬には病的な青白さが残ったままだ。

翼はベッド脇にゆっくり膝をつき、冷えた手元へ額を押し当てた。肩が、抑えきれないほど震える。

負けた。完膚なきまでに。

親子の情も、...

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