第128章

新谷音羽は大きく息を吸い込み、胸の奥で渦巻く感情を無理やり押し殺した。白川康平に小さく首を振り、ぎこちない笑みを作る。

「ありがとうございます、白川さん。でも大丈夫です。ひとりでできますから」

もう誰にも寄りかかりたくない。これ以上、誰かの手を煩わせたくもない。

病院を出るころには、空はすでに薄暗くなっていた。

白川康平の「送るよ」という申し出も丁寧に断り、音羽はひとりでホテルへ向かって歩き出す。

灯りがともり始めた街。街路樹のアオギリが、街灯の下でまだらな影を落としていた。

俯いたまま歩く。頭の中はぐちゃぐちゃで、星野結月の言葉が呪いみたいに耳の奥で反響し続ける。

――そのと...

ログインして続きを読む