第136章

H市の夜。病院の廊下は消毒液の匂いに浸され、冷たく、息苦しいほど重かった。

新谷音羽と蒼井沢言が再び集中治療室の前へ来ると、さっきまでがらんとしていたはずの廊下に、黒いスーツ姿の屈強な男たちが数人、増えていた。

無表情のままICUの扉の前に立ち、まるで黙した門番のように内と外を遮断している。

「患者の家族です。面会させてください」

蒼井沢言が一歩前へ出る。声は落ち着いているのに、押し返しづらい圧があった。

先頭の男がわずかに身を屈める。礼儀正しいが、譲る気はない。

「申し訳ございません、蒼井さん。大旦那様と大奥様が中で面会中でして。どなたも通すなと仰せつかっております」

大旦那...

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