第31章

病院から戻って以来、蒼井沢言はほとんど片時も新谷音羽のそばを離れなかった。

会社の書類はすべて自宅へ持ち帰り、書斎で仕事をしていても、ふと思い出したようにリビングへ出てきては彼女の様子を確かめる。

田中さんは医師の指示どおり、三食きっちり胃にやさしい薄味の献立を用意してくれた。

新谷音羽はソファにもたれ、タブレットでデザイン資料をめくっていたが、文字も図面も頭に入ってこない。気づけば意識が会社へ飛んでいる。自分が担当しているあの案件、いまどうなっているのだろう。

「何を考えている」

書斎から出てきた蒼井沢言が、彼女の隣に腰を下ろす。

新谷音羽ははっとして顔を上げた。

「……別に...

ログインして続きを読む