第32章

柳沢雲子の顔色は、極限まで悪くなった。

「あなた……」

新谷音羽はその言葉を遮り、反論の隙すら与えない。

「私生活が乱れているなんて噂、今ここで警察に通報してもいいんですよ。誰が最初に流したのか、きっちり調べてもらいます。名誉毀損は、立派な犯罪です。責任、取れますよね」

オフィスが、すっと静まり返った。

女性同僚たちの顔から血の気が引き、視線だけが右往左往する。誰も、もう口を開けなかった。

柳沢雲子が奥歯を噛みしめ、言い返そうとした、その時――。

がちゃり、と扉がまた開く。

「随分と賑やかだな」

低く、磁力のある声。

全員の視線が一斉に入口へ吸い寄せられた。

蒼井沢言が...

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