第43章

新谷音羽はまだ体勢を立て直しきれないまま、あの女が狂ったみたいにまた飛びかかってきた。指が髪を根元から掴み、ぎりぎりと引きちぎるように引っ張る。

「離して!」

驚きと怒りが同時に噴き上がる。音羽は思いきり身をねじって振りほどき、相手の肩を押し返した。女はよろめき、尻もちをついて床に転がる。

「痛ぁーい! 人が殴られたぁ! 浮気相手がうちの旦那をたぶらかして、正妻まで殴るのよぉ!」

女はそのまま床に座り込み、太腿を叩きながら泣き喚いた。甲高い声がロビーに突き刺さり、あっという間に周囲の視線をかき集める。

同僚たちがざわざわと集まり、音羽を見ては指さし、ひそひそと囁き合った。

音羽は...

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