第45章

新谷音羽は反射的に断ろうとした。だが、考え直す。今日は最後の残金と完成品の受け渡しだ。人目の少ない場所なら、余計なトラブルも避けられるかもしれない。――ここで完全に終わらせる必要があった。

「わかりました。時間と場所、送ってください」

結局、そう返した。

夕方。新谷音羽は約束どおり『クラブ 雅』を訪れた。田村彰の名を告げると、侍者が深く頭を下げ、すぐさま二階へ案内する。通されたのは「響竹」と札のかかった個室だった。

田村彰はすでに中で待っていた。音羽の姿を見つけるなり立ち上がり、相変わらず礼儀正しい笑みで迎える。

「新谷さん、来てくれたんですね」

椅子を引かれ、ふわりと白檀の香り...

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