第50章

林翔太は腰が抜けて、危うくその場にへたり込みそうになった。心臓がばくばくと暴れて止まらない。

「クソッ! てめぇ、運転できねぇのかよ! さっさと死にてぇのか!」

我に返った瞬間、彼はすでに遠ざかっていくテールランプに向かって怒鳴り散らした。顔は血が上って、肝みたいな色になっている。

隣の友人も青い顔のまま、震えた声で吐き捨てた。

「誰だよ、今の。調子乗りすぎだろ」

蒼井沢言はハンドルを握ったまま、ルームミラー越しにあの道化を一瞥した。

瞳の底の冷えは、少しも薄れない。

――知らない感情だ。

怒りに混じった、獣じみた占有欲が、胸の奥で狂ったように増殖していく。

車は道路を切り...

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