第63章

温かな風が、彼の長い指の動きに合わせて髪を梳き、やわらかく彼女の頬を撫でていく。ドライヤーのぶうん、という低い唸りが部屋の静けさを覆い隠し、張り詰めていた神経も、いつの間にかほどけていた。

落ち着いてしまうと、さっき新谷家でテーブルをひっくり返した光景が、頭の中で何度も再生される。急に、どうしようもなく後悔が押し寄せた。

「沢言……」

新谷音羽は小さく息を吐き、かすれた声で言う。

「私、すごくみっともなかった? ヒステリーみたいで……」

さっき車の中で、今夜起きたことは全部、蒼井沢言に話してある。

蒼井沢言はドライヤーのスイッチを切った。ぶつりと音が止み、静寂が戻る。

次の瞬間...

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