第80章

男の身体がぴくりと強張った。次の瞬間、長い腕が伸びてきて、彼女の身体をまるごと掬い上げるように抱き寄せる。ぎゅう、と息が詰まるほど強く。

彼は頭を垂れ、顎を彼女の頭頂にそっと預けた。掠れた声が落ちる。

「……ここにいる」

その一言で、新谷音羽の張りつめていたものがほどけた。彼の胸の中でいちばん楽な場所を探し当て、身体を預ける。ほどなく、深い眠りへ沈んでいった。

翌朝。

新谷音羽は、窓の外から差し込む陽射しに呼び戻された。

ゆっくりと瞼を開けると、全身のだるさが昨日の出来事を容赦なく思い出させる。喉の奥がひりつき、腰が重い。

反射的に隣へ手を伸ばした。

触れたのは、温かい体温。...

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