第85章

「沢言、怒らないで」

新谷音羽は声を柔らげ、根気よく言い含めた。

「私、無茶してるわけじゃない。ネットの世論は24時間体制で監視させてるし、ホテルの警備も強化した。大丈夫」

一拍置き、冷静なまま続ける。

「浅田美晴は世論で私を潰すつもり。だったら、こっちが先に火をつけて、徹底的に燃やし切るしかない。いちばん燃え上がった瞬間に真実を投げ込めば、あの人は灰すら残らない」

筋道は明快で、論理も隙がない。怒りで視野が狭くなった衝動的な人間の言葉には、到底聞こえなかった。

蒼井沢言の胸の内で燻っていた苛立ちは、その説明で半分以上鎮まった。だが心配だけは、少しも薄れない。

彼は短く息を吐き...

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