第95章

彼が本気で怒っているのはわかっていた。自分の身体を顧みなかったことにも、蒼井翼があれほど大きな厄介事を引き起こしたことにも。

「大丈夫……本当に、平気だから」

新谷音羽は小さく言い返した。けれど胸の奥には、言葉にできない悔しさがじわりと湧いてくる。

ただ翼を助けたかっただけだ。しかも緊急事態で、考える暇なんてなかった。

「その場から動くな。余計なことはするな」

蒼井沢言の声はもう冷静に戻っていた。だが、その冷静さの下で、嵐が膨れ上がっているのが伝わってくる。

「今から行く」

通話が切れた。

新谷音羽はベッドヘッドにもたれ、疲れきった息を吐く。包帯の巻かれた腕をそっと撫でた。

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