第13章 崖から落ちる

安田杏里はそう言う時、西村友紀の方を見ることすらできなかった。自分の娘がプライドの高い性格で、こんな話を聞いたら耐えられないだろうと分かっていたからだ。

しかし、彼女にはどうすることもできなかった。

安田章をなだめるのは簡単だが、それも彼が心から納得してこそだ。今、自分が強引に出すぎれば、かえって逆効果になるだけだろう。

西村友紀は悔しいだけでなく、失望もしていた。

安田杏里がそう言った後、安田章は少しも反論せず、それどころか頷きさえした。「その通りだ、友紀はいつも物分かりがいい!」

これが、実の子とそうでない子の違いなのだ。

自分が必死に安田章に媚びへつらっても、得られたのは「...

ログインして続きを読む