第279章 親思いの娘

誠子は手を振ると、後ろに控えていたボディーガードが十数個もの重箱を抱えて入ってきた。

彼女たちも、何もこれほどの量を用意したかったわけではない。だが、他に方法がなかったのだ。

長年同じ屋根の下で暮らしていながら、母娘揃って安田大吉の好みを何一つ把握していなかったからである。

その物量を目にした青山光は、堪えきれずに「ぷっ」と吹き出してしまった。

誠子は冷ややかな視線を向ける。

「何よ、私たちを笑うつもり? あなたこそ兄貴の娘でしょう。食べる物の一つも用意しないなんて、どういうこと……」

「全くだわ。嫁に出した娘は他人同然とはよく言ったものね。この子は本当に気が利かないったらありゃ...

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