第3章

「あ、はい、ここにいます」

青山光がはっと顔を上げると、ちょうど身を屈めて顔を覗き込んできた青山雅紀と視線がぶつかった。

四つの目が、交差する。

二人の距離は今、互いの吐息が混じり合うほどに近い。

「え?」

不意に、青山光のきらきらと輝く瞳に、鋭い光が宿る。

目の前の男の耳が、真っ赤になっていることに気づいたのだ。

『これって、照れてるの?』

青山雅紀もまた、今の二人の体勢が少々親密すぎることに気づいていた。

特に、青山光の興味津々といった視線に射抜かれ、耳の先が燃えるように熱くなるのを感じる。

結局、先に視線を逸らしたのは青山雅紀だった。彼が咳払いをして声を発しようとした、その瞬間——唇に、柔らかな感触が伝わってきた。

青山雅紀の瞳が微かに揺れる。目の前まで身を乗り出してきた女を、信じられない思いで見つめた。

青山光が、彼の赤い唇に口づけていたのだ。

青山光は元々、目の前の男をからかってやろうと思っただけだった。

前世での二人の最初の出会いは、あまり美しいものではなかった。

あの時、青山光は薬を盛られ、わけもわからぬまま青山雅紀と一夜を共にしてしまった。

目覚めた後、彼女は青山聡の言葉を鵜呑みにし、青山雅紀という『小人』が自分を陥れるために薬を盛ったのだと決めつけ、心の底から憎んだ。

それからというもの、青山光はありとあらゆる手段で騒ぎを起こし続けたのだ。

二つの人生を通じて、彼女がこれほど純情で恥じらう青山雅紀の姿を目にしたのは、初めてのことだった。

またとない機会に、青山光はすぐさま彼をからかう気に満ちた。

しかし、彼女も予想していなかった。目の前の男の唇がこれほど柔らかく、口づけの感触がこれほど心地よいとは。

青山雅紀の頬が真っ赤に染まり、戸惑っている様子が視界の端に入る。青山光は思い切って両腕を男の首に回し、彼を引き寄せて自分の方へ身を屈めさせ、その口づけを深くした。

青山光が主導権を握り、青山雅紀の唇をこじ開ける。そして、目の前の男に熱い舌を絡ませた。

もう少しで自分が窒息しそうになるまでキスを続け、青山光はようやくわずかに唇を離した。

彼女は額を青山雅紀にこつんと当て、彼がまだ純情な顔つきをしているのを見て、思わずくすりと笑う。

「あなた、もしかしてこれがファーストキスだったりする?」

彼の様子からして、これが青山雅紀のファーストキスに違いないと青山光は確信していた。

青山雅紀は面子を潰され、冷たく鼻を鳴らす。

「何を馬鹿なことを……んむっ……」

彼が言い終わる前に、青山光は再び彼の唇に口づけた。

今度は、青山雅紀が威厳を取り戻そうと、受け身から攻めに転じた。青山光がキスしてきた瞬間、力強くその唇に噛みついたのだ。

微かな血の味が、二人の舌戦の間に広がる。

青山光は痛みを感じながらも離そうとせず、目を細めて笑みを浮かべていた。

ひとしきりのキスが終わり、青山光は手を伸ばして青山雅紀の熱くなった耳に触れ、笑いながらからかった。

「あなた、顔真っ赤だよ。照れてるの?」

青山雅紀は憎々しげに青山光を睨みつけ、手を伸ばして彼女を突き放そうとする。

手が伸びた瞬間、青山光はその手をさっと掴み、自分の頬にそっと当てた。

「はいはい、冗談はここまで。お腹空いた? 下に降りて何か食べない?」

実のところ、お腹が空いているのは青山光の方だった。

彼女は青山家ではろくに食事を与えられず、青山家に嫁いできたとはいえ、使用人たちはまったく自分に従おうとしない。

それは先ほどの、梯子を運ぶのを手伝ってほしいと頼んだ一件からも明らかだった。

青山光は、自分に下心があることを認めている。

彼女はこの家で威信を確立するために、青山雅紀の力を借りる必要があった。自分がただの幸せを招く花嫁であったとしても、青山雅紀という後ろ盾があるのだと、皆にはっきりと知らしめるために。

威信を築いてこそ、今後この家で動きやすくなるのだ。

青山雅紀は深淵のような眼差しで青山光を見つめる。

「空いてない」

彼は青山光を拒絶した。

青山光もめげずに説得を続ける。

「私と一緒に少し食べてよ。ね、お願い? あなた、あなたが一番優しいって知ってるんだから。この家に来た初日に、私が飢え死にするのを黙って見てられる?」

「あぁ、胃が痛い……青山家でもろくに食べさせてもらえなくて、新しい家に来ても食べさせてもらえないなんて……本当に胃の調子が悪いの」

彼女は身を縮こまらせ、胃のあたりをさすった。

青山雅紀は、彼女がわざと自分の前で芝居をし、可哀想なふりをして同情を引こうとしていると分かっている。

だが、拒絶の言葉は、口をついて出る頃には妥協に変わっていた。

「……行くぞ」

「やっぱりあなたが一番優しいって知ってた!」

青山光はすぐに手を離し、演技もそこそこに、身を乗り出して青山雅紀の頬に何度も力いっぱいキスをした。

「青山雅紀、大好き!」

彼は前世と同じように、自分に甘い。

青山雅紀は不自然に視線を逸らすが、脳裏では先ほどの青山光とのキスが勝手に再生されてしまう。

考えれば考えるほど熱が込み上げてきて、青山雅紀は立ち上がって自分の後ろに回った青山光に言った。

「体が汚れている。先に着替えたい」

青山光は青山雅紀を上から下までじっくりと見つめ、全然汚れてなんかいないし、自分は気にしない、と言おうとした。

しかし、言葉が口から出かかったところで、青山雅紀が潔癖症だったことをはっと思い出す。

先ほど彼は床に倒れ、汗もかいた。今頃きっと不快に感じているだろう。

そう思うと、青山光は青山雅紀を寝室へと押しやった。

「シャワー浴びる?」

「ん」

青山雅紀は軽く頷いた。

その言葉を聞いて、青山光は答える。

「お湯、張ってあげる」

彼女は慌ててウォークインクローゼットへ向かい、丈の長いルームウェアを一着取ると、バスルームへ向かい彼のためにお湯を張り始めた。

すべてを終え、青山光は再び青山雅紀の前に戻る。

「できたよ」

青山雅紀をバスルームに押し入れると、青山光はそこから離れるつもりはなかった。

服を脱ごうとしていた青山雅紀の手がぴたりと止まる。眉をひそめ、冷たい声で彼女を追い払った。

「まだ出て行かないのか? ここにいてどうするつもりだ」

彼は冷たく退室を命じる。

青山光は何がおかしいのか分からないといった様子だ。

「手伝ってあげる」

青山雅紀の眼差しが一層険しくなる。

「必要ない。俺は足が不自由になっただけだ。手まで使えなくなったわけじゃない。自分一人でできる。出て行け」

言葉の終わりには、もう苛立ちが滲んでいた。

青山光はまだ何か言いたそうだったが、青山雅紀の苦しげで、何かを隠すような視線に、はっと気づかされた。

自分の過剰な気遣いは、青山雅紀の高いプライドを傷つけるだけなのだと。

彼によくしてあげたいと焦るあまり、彼の気持ちを無視してしまっていた。

青山光はしょんぼりと口を開く。

「……わかった。じゃあ、先に出てるね。何かあったら呼んで。すぐ外で待ってるから」

彼女はどこか安心できなかった。

青山雅紀の両足が麻痺していると診断された時点で、別荘の隅々まで青山さんによって改装されていた。

その中には、青山雅紀のバスルームも含まれている。

青山雅紀の氷のような視線を受け、青山光は身を翻して外へ出た。

彼女はそっとバスルームのドアを閉めると、そのままドアの前に立って待っていた。

青山光は自分の性急な行動を少し後悔しながら、どうすれば一歩一歩青山雅紀の信頼を得て、彼の自尊心を傷つけることなく、さりげなく気遣うことができるか、心の中で算段を立てていた。

一方、青山雅紀は青山光がドアを閉めた瞬間、張り詰めていた感情がわずかに緩むのを感じた。

彼は手慣れた様子で服のボタンを外していく。

服を脱ぐと、その体にはおぞましい傷跡が露わになった。

あの交通事故は青山雅紀の両足だけでなく、全身に無数の傷跡を残していった。それは体中に広がり、見るもおぞましく恐ろしいものだった。

青山雅紀は嫌悪に満ちた表情で自分の体中の傷跡を見つめ、最速で体を洗い清めた。

ドアの外では、青山光が中から聞こえてくる水の音を聞きながら、前世で数えるほどしかなかった青山雅紀との睦み合いを思い出していた。

その艶めかしい光景に、彼女の頬が赤く染まる。

その時、バスルームから物音が聞こえ、瞬時に青山光を現実に引き戻した。

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