第541章 子供

夜は更け、世界が音を失っていた。

 病室の中は、針が落ちる音さえ聞こえそうなほど静まり返っている。

 響いているのは、かすかな寝息だけ。

 青山雅紀は、腕の中で眠る女を見つめながら、そっと背中を撫でた。やがて忍ぶような仕草でスマホを取り出し、あのメールを何度も、何度も読み返す。

 病院側が、神経を破壊する各種の薬剤を突き止めたという。調べた結果、その薬が人体に与えるダメージは、基本的に不可逆。もちろん、神経を少しずつ回復させる薬もないわけではない。

 現状を見るかぎり、青山光に投与されたのは初期段階の量で、誰かに仕組まれたにせよ、致命的というほどではなかった。ここしばらく静養を続け...

ログインして続きを読む