第76章 早く出て行ってください

小林岳?

 小林輝は自分の耳を疑った。彼は素早く振り返り、声のした方へと視線を向ける。そこには、屈強な中年男性が、痩せ細った人影に向かって怒鳴りつけていた。今にも拳を振り上げんばかりの剣幕だ。

 彼は思わず拳を固く握りしめた。

 その痩せた人影は彼に背を向けており、顔は見えない。慌てふためき、恐怖を滲ませた声が聞こえてきた。「み、三浦さん、すみません。トイレに行ってただけで……今すぐ荷物を運びに行きます」

 彼の謝罪は、しかし男の態度を軟化させるどころか、かえって嫌味な嘲笑を誘った。「おいおい小林岳よぉ、お前、もしかして女なんじゃねえのか? 一日中トイレだなんだって俺たちから隠れやが...

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