第103章

二ノ宮原子は手元の用事を慌ただしく片づけると、疲れの残る身体を引きずるようにしてホテルを取り、そこに一泊することにした。

シャワーを浴び、さあ眠ろうとした瞬間だった。

――何かがおかしい。

部屋の中に、急に濃い煙が立ちこめた。

同時に火災報知器がけたたましく鳴り、天井のスプリンクラーから雨のように水が噴き出す。

原子は反射的にドアを開けた。

廊下には支配人が立っていて、隣室の客に頭を下げながら説明している。

『誠に申し訳ございません。損害につきましては、必ず当ホテルが補償いたします』

支配人の身体が邪魔で、隣室の客がドア枠に寄りかかっている姿はよく見えない。顔も分からない。

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