第108章

周防美根子が手を伸ばしかけた、その瞬間――薄原川人に手首をがっちり掴まれた。

反応する暇もない。

どさっ、と身体が床へ叩きつけられる。

「きゃっ!」

美根子は息を呑み、信じられないものを見るように薄原川人を見上げた。

『薄原様……な、何をなさるんですか?』

親友から聞いていた。個室を出たスタッフが「薄原様、かなり飲まれてます」と言っていた、と。

なのに。

こちらを見下ろすその目は、冴え切っている。酔っている人間のそれじゃない。

「誰が許した。俺に色目を使う度胸を」

薄原川人はゆっくり顔を上げ、差し出されたおしぼりで指先を拭う。拭い終えると、ぽい、と床に投げ捨てた。

美根...

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