第110章

二ノ宮原子は反射的にもがこうとした。だが、薄原川人の声が呪文みたいに耳の奥へまとわりつき、何度も何度も反芻される。

薄原川人は口元に、満足げな弧を描いた。

彼は蝋燭をすべて抜き取り、ケーキナイフを手に取ると、切り分けた一切れをそのまま二ノ宮原子の口へ押し込む。

二ノ宮原子は口元を手で隠し、くすりと笑った。

『甘い……大崎たち、見てるのに』

薄原川人が笑いながら視線を投げると、大崎と野山も揃って肩をすくめ、こっそり笑った。

お嬢さんはすっかり照れてしまい、薄原川人の誕生日を祝ったあと案の定ベッドへ押し倒され、また彼と親密な時間を過ごすことになった。

あの、満たされることを知らない...

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