第112章

周防老人が立ち去ると、警官が二ノ宮原子の前へ身を寄せた。

『二ノ宮さん。可能でしたら薄原さんに連絡を。ここを出られるかどうかは、薄原様のお言葉ひとつです。でなければ、こちらも通常の手続きで進めるしかありません』

二ノ宮原子は目を閉じ、聞こえないふりを決め込んだ。

警官たちは顔を見合わせ、諦めたように首を振る。

取調室に一人残される。壁に掲げられた大きな文字を見上げたまま、原子は思考の底へ沈んだ。

――さっき周防美根子から電話があった。

薄原川人と寝た、だの。弥香の名前まで持ち出して。

嘘だと分かっている。分かっているのに、胸の奥がざわつく。

それよりも引っかかるのは、美根子が...

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