第125章

急ブレーキの甲高い音が響いた。二ノ宮原子は命がけで前へ走る。息を整える暇すらない。

『止まれ! 待ちやがれ!』

背後から運転手の怒鳴り声。逃げられたら終わりだと思うだけで、男の脚は勝手に震えだす。

――自分の人生は、二ノ宮原子に握られている。

原子は岩陰へ滑り込み、腰から拳銃を抜いた。狙いを定めるのは、追ってくる愚かな男。

脚。

引き金を絞る。

どんっ、と空気が裂けるような破裂音。続いて悲鳴が弾け、運転手はその場に崩れ落ちた。

原子は駆け寄り、周囲を素早く見回す。ほかに仲間の気配がないと判断すると、男の首筋を押さえつけた。

『言え。誰の差し金だ』

運転手は最初こそ歯を食い...

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